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建築のチカラで、未来を描く。
仙台工科専門学校の建築デザイン学科には、アイデアと情熱をカタチにする力を育てる環境があります。その学びの成果がひとつのカタチとなって表れたのが、「第31回みやぎ建築未来賞」。今回、見事受賞を果たしたのは、建築デザイン学科の学生4人がチームで挑んだ意欲作です。彼女たちは、限られた時間とリソースの中で、どのようにして「愛を感じる住まい」というテーマをカタチにしていったのでしょうか——。受賞の舞台裏と、制作に込めた想いを伺いました。
第31回みやぎ建築未来賞
テーマ「愛を感じる住まい」
受賞作品
「Lepa Field ~愛と共創のバ~」
仙台市が西公園プール跡地に計画中の屋内遊技場を、“遊び場+学び場+アート”が融合した新しい拠点として提案。
Learn・enjoy・play・artの頭文字を取って「Lepa Field」と名付けました。
受賞内容
- みやぎ建築未来賞 大賞(専門学校・大学校部門)
- 宮城県設計事務所協会web賞(専門学校・大学校部門)
- ベストプレゼン賞(出場全29組)

受賞メンバー(写真左から)
櫻井 千聡さん(建築デザイン学科・宮城県出身)
川崎 祐奈さん(建築デザイン学科・岩手県出身)
小川 七海さん(建築デザイン学科・青森県出身)
青野 美桜さん(建築デザイン学科・宮城県出身)
「挑戦したい!」から始まった私たちの挑戦
今回のコンペに応募したきっかけは?
櫻井さん:最初は私と青野さんが先生から「こういうコンペがあるよ」って4月くらいに教えてもらったのがきっかけでした。そこから小川さん、川崎さんが加わって6月頃から動きはじめました。

全力で取り組んだ夏、模型と格闘する日々
制作はいつ頃から本格的に?
青野さん:6月からコンセプトを詰めて、9月からスタディ模型に取りかかりました。本格的にはその頃ですね。
櫻井さん:模型づくりが始まってから、かなり頻繁に集まって作業していました。放課後だけでなく休みの日も先生に協力してもらって、学校に来て作ってました。
「子ども×文化」未来を育む場所を目指して
今回の作品のコンセプトはどのように決めた?
櫻井さん:私たちが選んだ場所が、実際に仙台市が子どもの屋内遊戯場を建てようとしている場所で、話題性がありました。そこに対して、自分たちなりに「愛を感じる住まい」に絡めた施設を提案してみようと決めました。
青野さん:その場所は青葉城の城下町で、昔から学校や文化施設が集まっているエリアなんです。今では大学や博物館、音楽堂などもあって、すごく文化的な場所。だからこそ、子どもが成長できるような文化的空間をつくりたいという想いがありました。
櫻井さん:私たちが提案したのは、子どもとアーティストが一緒に住みながら生活して学べる空間です。アーティストが作るアートから子供たちは学びや遊びを得て、みんなが一つになって楽しむといったような、そこにしかない関係性や学びが生まれると思ったんです。仙台ゆかりの職人さんやアーティストと、ここで育つ子どもたちが一緒に時間を過ごし、やがて巣立ってもまた戻ってきたくなる、そんな場所を目指しました。
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「関わりをデザインする」建築の工夫
こだわった点は?
櫻井さん:子どもとアーティストが一緒に暮らして学べる場所という、人と人とを繋ぐ空間を目指しました。
青野さん:「場」という言葉をあえてカタカナにして、いろんな人がそれぞれの立場で、自分の居場所だったり活動の場だったり、自由に解釈できるようにという思いを込めました。
川崎さん:デザインでは、段差を活かして1.5階や2.5階などの構造にもこだわりました。建物を重ねすぎず隙間を作ることで風や光を通す工夫をし、いつでも明るく新しい風が吹くような場所をイメージしました。
「伝える力」を磨いたプレゼンの日々
プレゼンテーションはどうでしたか?
小川さん:役割分担をして、説明をする役割が2人、説明の内容がどの部分にあたるのかを模型等で指し示す役割が1人、スライドを操作する役割が1人と、全員で連携を取って行いました。
青野さん:ギリギリまで先生や友人に見てもらって、何度も修正を重ねて完成させました。本番では照明を落として模型を光らせる演出も取り入れて、印象的にできたと思います。
川崎さん:質問が来た時に備えて、最後のスライドに想定できる質問に対する回答を準備していましたが、当日は会長さんがたくさん感想を話していただいて、全体的にあまり質問が多くなく安心しました。

試行錯誤の先に見えた達成感
大変だったことは?
川崎さん:やっぱり模型ですね。特に大きさのバランスに苦労しました。
青野さん:最初に模型を作ってから図面を起こしたので、現実のサイズに落とし込んでみるとびっくりするようなサイズ感になってしまったり、整合性を取るのが大変でした。
櫻井さん:教室サイズのトイレを作っちゃったりして(笑)その都度修正していきました。
建築を「楽しむ心」を知った瞬間
この経験から得たものは?
川崎さん:初めてのチャレンジで、大賞を受賞できたことは大きな自信になりました。そして仲間と最後まで一つの物を作り上げるという経験が自分にとってはとてもいい思い出になりました。自分の創造力が掻き立てられるような日々で、自由に建築を考える楽しさを知りました。
櫻井さん:授業ではなかなかチームで1つのものを作るという経験はできないので、とことん議論して、試行錯誤して、形になっていく過程が本当に楽しかったです。本当にチャレンジして良かったと思っています。
小川さん:私は平面図を担当したんですが、普段授業でこういう歪な形を図面に落とすということはやってこなかったので、難しかった半面経験値は上がったと思います。卒業後は施工管理の仕事に就きますが、設計や模型に触れることで全体像を理解する良い経験になりました。
青野さん:みんなで「現実的な部分に囚われすぎずに自由な発想をしよう」というところから始めました。その結果、型にはまらない考え方が、発想の可能性を大きく広げていくことを実感できる貴重な経験となりました。プレゼンテーションでも、どんな言葉を使えば自分たちの想いが伝わるか、どんな表現をすれば相手に響くのかなどを深く考える良い機会になりました。卒業制作や就職後に活かしていきたいです。
「この場所にしかない建築」をつくる未来へ
最後に今後の目標を教えてください。
川崎さん:私は卒業後、建築士専攻学科に進学が決まっているので、建て方や工法についてもっと知識を深めて、将来に繋げたいです。このコンペで身につけた最後までやりきる心はずっと忘れず持ち続けたいと思います。
櫻井さん:今回、私たちは土地の文化や歴史まで丁寧に掘り下げ、「新しさの中にも歴史のつながりを残す」ことを意識したプランニングを行いました。
自分たちの設計した建物が実際にあの場所に建ったらいいな、そのとききっとその場所には新しい良い未来が生まれるだろうな、ということを強く実感しました。この経験を糧に、将来は建築士として地域の人々に喜ばれる建物をつくりたいと思います。その土地ならではの価値を活かした建築を考えていきたいです。
青野さん:私も櫻井さんと同じで、設計する際には、その場所の背景や依頼者の人生を深く考えて、地域貢献や人の心に届く建物を作りたいです。
小川さん:現場で働く上でも、1人ではなくみんなと協力していかなければいけないものだと思うので、そういう体験というか経験ができたことは施工管理でも活かしていける部分だと思います。将来的には設計の仕事に携わる可能性もあります。そのため、これからのさまざまな場面で今回の経験を活かし、成長していきたいと考えています。

仙台工科専門学校の学生たちの熱い想いが形になった今回のプロジェクトは、まさに「建築で未来を描く」実践の場でした。これからの彼女たちの活躍が本当に楽しみです!














